「業務マニュアルを作ってほしい」と頼まれたものの、何から手をつければいいのか分からない。そう感じたことはないでしょうか。マニュアルが担当者しか把握していない状態のまま残ってしまうと、その人が休んだり異動したりしたときに、周りが対応できなくなってしまいます。この記事では、Microsoft 365に含まれるOneNoteを使って業務マニュアルを作る基本的な方法と、属人化を防ぐために私が実際に使っている9つの構成項目を、初めてOneNoteを使う方にも分かるように紹介します。
業務マニュアルが属人化する原因
個人管理・紙のマニュアルで起きやすい問題
業務マニュアルが属人化してしまう背景には、マニュアルそのものが個人管理になっているという問題があります。私の職場でも、紙への手書きやメモ程度の資料が中心で、その担当者しかマニュアルを持っていない、という状態がありました。担当者本人にとっては使い慣れた資料でも、他の人から見ると「どこに何が書いてあるか分からない」状態になりがちです。
更新日時が分からず、現状に合わなくなる問題
さらに、紙の資料は更新日時が分かりにくいという問題もあります。私が整備に取り組む前は、その手順が今も有効なのか、それとも古くなっているのかを、資料だけでは判断しにくいことがありました。加えて、急なテレワークが必要になった際に、必要なマニュアルが会社にしかなく確認できない、引き継ぎに思った以上の時間がかかる、といった状況も経験しました。こうした課題が積み重なった結果、マニュアルを個人管理から誰でも確認しやすい形に変えたいと考えるようになりました。
OneNoteが業務マニュアルに向いている理由
ノートブック・セクション・ページで体系的に整理できる
OneNoteは、ノートブック・セクション・ページという階層で情報を整理できるツールです。業務ごとにセクションを分け、その中に必要なページを作っていくことで、紙のメモや手書き資料よりも体系立てて情報をまとめやすくなります。
Microsoft 365環境での共有のしやすさ
私の職場では、もともとMicrosoft 365が導入されていました。そのため、追加のツールを新しく契約しなくても、検索のしやすさ、複数人での共有のしやすさ、更新のしやすさを考えたときに、OneNoteが選びやすい選択肢でした。実際に、SharePoint(Microsoft 365に含まれる、ファイルや情報をチームで共有するためのサービス)上に保存する形で、チームの誰もが確認できるようにしています。
なお、OneNoteでの共同編集や共有の具体的な仕組み(保存場所の条件や権限の考え方)は、誤解が起きやすい部分でもあるため、この記事の後半「作成後に更新・共有を続ける方法」でMicrosoft公式情報をもとに補足します。
業務マニュアルを作る基本手順
ノートブックとセクションを用意する
まずは業務マニュアル用のノートブックを1つ用意し、業務の種類ごとにセクションを分けるところから始めます。最初から完璧な構成を目指す必要はなく、まずは大まかな括りでセクションを作り、あとから育てていくつもりで始めるとよいでしょう。
ページテンプレートを作って構成を統一する
セクションの中に作るページの構成をあらかじめ決めておき、ページテンプレートとして用意しておくと、誰が作成してもマニュアルの構成がばらつきにくくなります。次に紹介する9つの構成項目は、まさにこのページテンプレートの土台として活用できます。
オーナーが使用している9つの構成項目
9項目それぞれの内容とねらい
私が実際にOneNoteの業務マニュアルテンプレートで使っている構成項目は、次の9つです。それぞれ「何を書く欄なのか」「なぜ必要なのか」を意識しながら紹介します。なお、以下はあくまで一般化した書き方の例であり、実際のマニュアルの記載内容そのものではありません。
- 業務概要
その業務が何を目的とした業務で、誰が担当するのかを最初に示す欄です。初めてページを開いた人が、まず全体像をつかめるようにするために必要です。「この業務は何のために、誰が担当しているのか」を一文でまとめるところから始めると書きやすくなります。作成・更新時は、業務の目的が変わったときに放置されがちなので、定期的に内容が今も合っているか見直すことが大切です。 - 業務フロー(ステップ別)
作業の流れを順番に示す欄です。初めて担当する人でも迷わず進められるようにするために必要です。「1. 〜する」「2. 〜を確認する」のように、手順を番号付きで並べると分かりやすくなります。手順が変わったときは、古い手順を消さずに改訂履歴(後述)と合わせて更新すると、変更の経緯も追いやすくなります。 - 注意点・FAQ
過去につまずいた点や、よく聞かれる質問をまとめる欄です。同じ質問が何度も繰り返されるのを防ぐために必要です。質問と回答をセットで書いておくと、後から見返す人が探しやすくなります。運用を始めてから実際に出た質問を、都度追加していく形で育てていくとよいでしょう。 - 使用ツール・テンプレート
その業務で使うツールやファイル、テンプレートの場所をまとめる欄です。「どこに何があるか探す」という無駄な時間を減らすために必要です。ツール名とその用途を簡単に書いておくだけでも、初めての人には助けになります。ツールが変更・廃止されたときに、この欄の更新を忘れないようにすることが注意点です。 - 承認・連携フロー
誰の承認が必要か、どの担当・部署と連携するかを示す欄です。業務が一人で完結しない場合に、誰に確認すればよいかを明確にするために必要です。たとえば「上長の確認が必要」「関連部署と共有する」のように、実際の役職名・部署名ではなく役割として一般化して書いておくと、読み返す人にも伝わりやすくなります。承認者や連携先が変わった場合は、他の項目以上に早めの更新を意識したい欄です。 - トラブル対応・問い合わせ
トラブルが起きたときの対応手順と、問い合わせ先をまとめる欄です。慌てたときほど、どこを見ればよいか分からなくなりがちなので、落ち着いて対応できるようにするために必要です。「まず何を確認するか」「次に誰に連絡するか」の順で書いておくと使いやすくなります。対応手順や連絡先が変わった場合は、古い情報のまま放置しないよう、気づいたタイミングで更新することが大切です。 - 改訂履歴
いつ・誰が・何を更新したかを記録する欄です。「この手順は今も有効なのか」を判断できるようにするために必要です。更新日と変更内容を簡単に一行でも残しておくだけで、後から見たときの安心感が大きく変わります。追記するだけで終わらせず、内容が増えてきたら定期的に見返す機会を作ると、より活用しやすくなります。 - 教育記録
誰にいつ教育・引き継ぎを行ったかを記録する欄です。教育状況を把握し、抜け漏れを防ぐために必要です。日付と対象者、教えた内容を簡単に記録しておくと、引き継ぎのタイミングでも役立ちます。誰が記録しても同じ基準になるよう、記録する項目(日付・対象者・内容など)をあらかじめ決めておくと、書き忘れを防ぎやすくなります。 - マニュアル作成担当者
そのマニュアルの作成・更新の責任者を明記する欄です。内容に疑問があったときに、誰に確認すればよいかを分かるようにするために必要です。「作成日・作成者」「最終更新日・最終更新者」のように、書く項目の構成だけを一般化して用意しておくと、実際の運用に合わせて記入しやすくなります。担当者が異動・交代した場合は、この欄を最初に更新することを意識しておくと、更新漏れを防ぎやすくなります。
OneNoteで管理して感じたメリット
マニュアルの整備状況を把握しやすくなった
紙や個人管理の資料と違い、OneNote上でまとめるようになってから、どのマニュアルが整備されていて、どれがまだ手つかずなのかを確認しやすくなりました。必要なマニュアルを探すときも、以前より見つけやすくなったと感じています。また、9つの構成項目をテンプレート化したことで、作成する人が違っても確認する項目をそろえやすくなりました。
教育記録・FAQの蓄積で問い合わせ対応が楽になった
教育記録を残せるようにしたことで、誰にどこまで教えたかを振り返りやすくなりました。また、注意点・FAQを少しずつ追加していくことで、同じ質問が繰り返されにくい形を目指しています。すべての質問がなくなったわけではありませんが、蓄積された分だけ、過去の回答を参照できる場面は増えてきました。
導入前に知っておきたい注意点
操作に慣れるまで使いにくい場合がある
OneNoteに慣れていない人にとっては、操作に慣れるまで使いにくいと感じる場合があります。普段使っているツールと勝手が違うと感じるのは自然なことなので、最初から完璧に使いこなそうとせず、少しずつ触れる項目を増やしていくくらいの気持ちで始めるとよいでしょう。
ツール導入だけでは属人化は解消しない
OneNoteを導入したからといって、それだけで属人化が完全に解消するわけではありません。マニュアルを整理し、更新し続ける運用そのものが必要です。ツールはあくまで、マニュアルを共有・更新しやすくするための選択肢のひとつと捉えておくと、導入後のギャップを感じにくくなります。
作成後に更新・共有を続ける方法
SharePoint・Microsoft 365での共有と権限設定
作成したマニュアルを一人で抱え込まないためには、共有の仕組みを理解しておくことが欠かせません。Microsoft公式情報によると、OneNoteのノートブックを複数人で共同編集するには、OneDriveまたはSharePoint上に保存されていることが前提になります。また、共有の権限は基本的にノートブック単位で考えるしくみになっており、ページやセクションへのリンクだけを送った場合でも、共有された相手がアクセスできる範囲は、そのリンク先の一部だけとは限りません。あわせて、「ページの内容をメールなどでコピーとして送ること」と「ノートブックを共同編集できる状態で共有すること」は別の機能として区別されています。
私の職場では、SharePoint上に保存する形でマニュアルを共有していますが、実際の共有範囲や権限の設定は、組織のMicrosoft 365環境や管理者の設定によって異なる場合があります。社内の情報を扱う場合は、保存場所と閲覧・編集の権限を、事前に自社の管理者へ確認することをおすすめします。
改訂履歴・教育記録を運用し続ける
マニュアルは作って終わりではなく、更新し続けることで初めて役立つものになります。改訂履歴と教育記録の2つの項目を意識して運用するだけでも、「今も有効な手順か」「誰にどこまで教えたか」を把握しやすくなり、属人化を防ぐ土台になります。
まとめ
紙や個人管理のマニュアルには、更新日時が分からない、テレワーク時に確認できない、引き継ぎに時間がかかるといった課題があります。OneNoteは、こうした課題を解消し、業務マニュアルを共有・更新しやすくするための選択肢のひとつです。業務概要から改訂履歴、教育記録まで含めた9つの構成項目を土台にすれば、初めてマニュアルを作る場合でも、必要な項目を抜け漏れなく整理しやすくなります。
まずはOneNoteでノートブックを1つ作り、9つの構成項目のうち、自分の業務にとって必要な項目から作り始めてみてください。すでに紙や個人管理のマニュアルがある場合は、まず1件だけOneNoteへ移してみることから始めるのもおすすめです。
参考情報(Microsoft公式サポート、2026年9月確認)
- OneNoteノートブックの共有には、OneDriveまたはSharePointサイトへの保存が必要です。共有時には「編集可能」「閲覧のみ」の権限を選べますが、権限はノートブック単位が基本で、ページやセクションへのリンクを送った場合でも、共有相手がノートブック全体にアクセスできる場合があります(How to share a OneNote notebook | Microsoft Support)。
- SharePointサイト上にノートブックを作成すると、読み取り/書き込み権限を持つメンバー全員が閲覧・編集できます(Create a notebook on a SharePoint site | Microsoft Support)。
- 実際の共有範囲・権限設定は組織のMicrosoft 365環境や管理者設定によって異なる場合があるため、社内情報を扱う際は自社の管理者に確認してください。
